災禍の刻印 第一章 虚ろの神子 虚ろの神子 2 起き抜けはいつも、夢と現実の境目が曖昧だ。柔く身体を包む寝具と紗の天蓋、碌に使われない文机に書棚、微かに鼻腔をくすぐる香の匂い。それらを徐々に認識して、ようやくリューグは自分がいる場所を思い出す。ジスアード神聖国、王都アンヘル。リディム教の... 2020.10.05 災禍の刻印 第一章 虚ろの神子
災禍の刻印 第一章 虚ろの神子 虚ろの神子 1 いつも、同じ夢を見る。 夢の中で俺は、短い手足を懸命に動かし何かから逃げていた。周りは知らない街だった。土で固められた建物も荷運びする驢馬もありふれた光景だが、吸い込む空気は馴染みのない味がした。当然、道も分かるわけがない。 背後から男たち... 2020.09.27 災禍の刻印 第一章 虚ろの神子