Eternal cage 第五章 犠牲

Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 9

「イルファ!」 鋭い叫びに応えるようにして、巨大な蛇のように炎がうねった。爆煙を巻き起こし、顎をあけてヴァルトたちに襲い掛かる。それを避けようとした二人の隙間を狙って炎は軌道を変え、片方だけを取り囲むようにしなったかと思うとユイスを巻き込ん...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 8

状況がある程度落ち着いたところで、ユイスは神官たちに後を任せ町を離れることを決めた。時柱を早く取り戻さねばならない現実に気が急いたのもあるが、住民たちの反発が強くなってきたことが大きい。いくら弁明したところでユイスたちは彼らにとって異物に過...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 7

人気のない廊下に、足音が高く響く。既に就寝しているであろう人々への迷惑は、既にレイアの頭からは抜け落ちていた。階段を駆け下り、食堂を抜けて玄関の扉を開け放つ。途中で夜通し仕事をしていた神官に何か声を掛けられた気がしたが、構ってはいられなかっ...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 6

自身が異端の存在であるという自覚が芽生えたのは、いつのことだっただろうか。気付いた時には既に周囲から崇められ、或いは気味悪がられ、一人で違う世界に取り残されていた。きっと明確な転換点があったわけではないのだと思う。ただ、最初のきっかけだけは...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 5

物音がする、と気付いて意識を向けた先には、白い壁と木の扉があった。身体を覆っていたシーツを引き剥がし、辺りを見回す。さほど広くもない、質素な備品が最低限に設置された宿の部屋。窓の外はすっかり暗くなっていたが、日付はまだ変わっていないだろう。...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 4

瞼を開くと、目に飛び込んできたのは見慣れぬ部屋の景色だった。身体を休めようと横になった素朴な宿ではなく、華やかな調度品と不思議と昼の明るさを保った部屋。更におかしなことに、なぜかユイスは床に転がっていた。確かにベッドに潜り込んだ記憶があるの...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 3

「……殿下! ユイエステル殿下!」 荒々しく名を呼ばれたことで、ユイスは我に返った。カタン、と手元で小さく音が鳴る。取り落としたペンは机の上で跳ね返り、あらぬ方向へと転がっていった。インクはすっかり乾ききっていたようで、幾重にも重なった書類...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 2

「イルファ、そうなの?」「んー、何がだー?」 当事者が陣取っている頭上に手を伸ばし、レイアが尋ねる。しかしイルファは生返事を返すばかりだった。話を聞いていないのか、それとも自覚がないのか。その両方、という線が一番濃厚である。様子を見ていたレ...
Eternal cage 第五章 犠牲

犠牲 1

濃密な緑の木々を背景に、鮮やかな青い髪がふわりと揺れる。本来なら己の領域ではない場所に現れた水の眷属の姿は、どこか場にそぐわないような違和感と、確かな味方が身近にいるという安堵をユイス達にもたらした。「さて、話の続きをしなきゃなの」 驚きの...