Eternal cage 第四章 人と精霊

Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 8

「流石に察しがいい。そう、エルドはヘレス王家の子孫だよ。その血筋を遡って私が出てきたというわけだ。はっきりと自我を持つのには時間がかかったが、ね。エルドはエルドで別にいるよ。ただ、症状が進行すれば消えてしまうかもしれないけどね」「そんなこと...
Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 7

神殿の門前から見上げた、山の木々を追い越し天へ伸びる塔。ここでは、それが風の王を祭る聖殿の役割を担っているらしい。ヴァルトが残した言葉に誘われるまま、ユイス達は塔へ向かって歩を進めた。案内役であった少年はいなくなってしまったが、迷うこともな...
Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 6

言いかけて、ユイスははたと口を噤んだ。エルドの様子がおかしい。新緑の瞳は突然枯れてしまったかのように色褪せ、焦点の合わない虚ろな視線が宙をさまよう。どうした、と声を掛けようとした瞬間、その身体から力が抜け落ちた。意識を失ったように見えたエル...
Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 5

山肌を切り崩して無理矢理平らにしたような場所に、風の神殿はひっそりと佇んでいた。他の神殿と同じように建物は白で統一され、門前にはそこで祀る精霊の像が置かれている。異なっているのは、敷地全体を囲む防壁が無いことだ。この険しい山道自体が自然の要...
Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 4

話に違わず、風の神殿への道程は険しいものだった。鬱蒼と頭上を覆う木々のお陰で薄暗く、湿り気の多い土は足が沈んで余計に体力を消耗する。道幅も狭く、太い木の根と苔むした岩があちこちにのさばっていた。階段と呼ぶにも躊躇うような、辛うじて人の手が入...
Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 3

「俺、昔ルーナに住んでたんだ」 エルドと名乗った少年は、ユイス達と同じテーブルで麦粥を頬張りながら語り始めた。未だ湯気の立つそれはやはりかなり熱かったららしく、エルドは随分苦労した様子で嚥下する。「もう何年も前だけど。たまたまイルファを見つ...
Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 2

丸一日を休養に費やし、レイアの怒りもどうにか治まったところで、ユイス達はイルベスの町を後にした。出立の時にレニィの姿を探してみたが、結局あれ以来顔を見せることはなかった。元々『見張り』として同行していたらしいので、彼女達の領域を去るなら顔を...
Eternal cage 第四章 人と精霊

人と精霊 1

身じろぎした時の、身体が引き攣るような感覚で目が覚めた。肌に柔らかな感触が触れる。清潔なリネンと暖かな空気が、疲弊したユイスを優しく包んでいた。引きずるように半身を起こしベッドに腰掛ける。部屋の内装と窓から見える景色からして、どうやら水の神...