日影の都 第二章 Bright blue

日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 8

風が緩やかに梢を揺らす中、ルカは帰路を急いでいた。歩きやすく整えられた道を外れ、木々の間を縫うようにして歩く。またもや迷った、というわけではなく、これが正しい道なのである。慣れた様子で辿り着いた先には、巨大な白磁の壁があった。重々しく聳える...
日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 7

日が沈むのは、人々を心地よい眠りに導くためだという。けれど、そんなものは嘘だ、とゼキアは思った。 少なくともこの貧民街においてはそうだ。闇夜は、“影”たちの味方である。彼らの姿を隠し、獲物となる者の視界を奪う。そうして人が狩られていく様を、...
日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 6

じりじりと、まるで臓腑が蝋燭で炙られているようだった。熱を孕んだ不快感と言い様のない不安感に襲われ、ルアスは目を覚ました。「目、覚めたか」 いったいこれは何なのかと、そう思考を始める暇もなく声をかけられる。重い身体を引き摺るように起こすと、...
日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 5

少々、自分の方向感覚を過信していたかもしれない。月明かりを頼りに歩を進めながら、ルカは思った。「……完全に迷ったわね、これは」 昼間に市街地へ戻った時と比べて、優に二倍近い時間を歩き続けている。そんなことはない、と自分を誤魔化し続けていたが...
日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 4

徐々に日が傾き、石畳を赤く照らし始める頃。イフェスの市場はまだまだ賑やかだ。あちこちから聞こえる威勢の良い声。夕食の材料を買い求める女性。遊び足りないのか、帰りたくないと駄々をこねる子供たち。人々はやがて訪れる夜に怯えることなく、生活を営ん...
日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 3

「ようやく一区切りついたぜ。買い物大丈夫だったか……ってそちらさんは?」 余程根を詰めていたのだろうか、腕を伸ばし、間接を鳴らしながら現れたゼキアは、見慣れない人物がいることに気付くとルアスに問いかけた。対してルカは、何故か面喰らったかのよ...
日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 2

女性はルカと名乗った。腰ほどまである鮮やかな瑠璃色の髪をひとつに束ね、同じ色の瞳には凛とした輝きがあった。年頃の娘が好むような長いスカートではなく、ぴったりとした丈の短い上着にズボンという、動きやすさを重視した服に身を包んでいる。かといって...
日影の都 第二章 Bright blue

Bright blue 1

あぁ、いったい何だというのだ、この既視感は。 ルアスは目眩にも似たものを覚えながら、目の前の男達を見上げた。「この前はよくもやってくれたな、坊主」「今日こそは覚悟するんだな」 スキンヘッドと、髭面の屈強な男。いつだかに見た風体だ。ルアスは日...