星紡ぎのティッカ 星紡ぎのティッカ 7 「ステラ、ステラ、大丈夫?」 軽く身体を揺さぶると、ステラは小さく呻きながら顔を上げた。まだぼんやりした様子の彼女を助け起こし、軽く土を払ってやる。見たところ、大きな怪我はないようだ。「どこか痛いところは?」「……平気。ちょっと目が回ったけ... 2020.09.13 星紡ぎのティッカ
星紡ぎのティッカ 星紡ぎのティッカ 6 ステラ、と少女の名前はいうらしい。古い言葉で《星》を意味する言葉なのだと彼女が名乗ったのは、もう随分歩き回ってからのことだった。大事な物を無くした、という割に、彼女は妙に楽しげにティッカの手を引く。実は、単に遊び相手が欲しかっただけなのでは... 2020.09.13 星紡ぎのティッカ
星紡ぎのティッカ 星紡ぎのティッカ 5 人が死んだ後、魂は空へ還るのだという。次の生を受けるための力を蓄え、空の上でその時を待つ。その輝きこそが、星の光だ。星紡ぎは、彼らの助けを得て力を発揮する。 木々の合間から覗く夜空を眺めながら、ティッカは師からくどいほど聞かされた教えを思い... 2020.09.13 星紡ぎのティッカ
星紡ぎのティッカ 星紡ぎのティッカ 4 翌朝、ティッカはいつも通りの時間に目を覚ました。星紡ぎ達の朝は大抵遅い。夜通し作業をして、眠りにつくのは朝方だ。一日が始まるのは、昼近くになってからである。ティッカは師匠より少し早く起きて、掃除やその日の仕事の準備をしておく。それが習慣だっ... 2020.09.13 星紡ぎのティッカ
星紡ぎのティッカ 星紡ぎのティッカ 3 ティッカが住む《星の塔》は、村から少し外れた湖のほとりにある。ハダル村との行き来は少々面倒だが、人々の喧騒から隔てられた静寂と、湖の涼やかな青が心を落ち着かせてくれる場所だった。遠い昔、星々に祈りを捧げるために作られた塔なのだという。古びた... 2020.09.13 星紡ぎのティッカ
星紡ぎのティッカ 星紡ぎのティッカ 2 星紡ぎ、と呼ばれる人々がいる。星の光から糸を紡ぎ、それを編み上げて形を作る。摩訶不思議な力で作られたその品は微かに金の光を放ち、夜空の星が手の中にあるような美しさと世で讃えられた。また星紡ぎの作品は星の光そのものであるゆえか、特別な効果があ... 2020.09.13 星紡ぎのティッカ
星紡ぎのティッカ 星紡ぎのティッカ 1 息を切らしながら、少年は村の中を走っていた。冬の朝の空気は呼気を白く凍らせ、痛いほどに肌を刺す。起きてから慌てて適当な服を選んだせいで、余計に寒さが身に染みた。せめてまともな上着くらいは羽織ってくるべきだったと後になって思うが、そんなことを... 2020.09.13 星紡ぎのティッカ
掌編 桜幻影 雨に打たれた薄紅は、散ってもなお味気無い地面を彩った。女は傘も差さず、空を見上げる。 ――雨の日の花見も乙なものだ、と。彼がそう言ったのは、いつの事だったか。灰色の空に浮かぶ桜は薄く靄がかかり、これはこれで幻想的な雰囲気で良いかもしれない。... 2020.09.13 掌編
Eternal cage 第六章 決別 Epilogue 窓から差し込み、手元を照らす日差しは穏やかだった。柔らかな午後の光で指先を温めながら、ユイスはペンを滑らせる。一枚、また一枚と重ね続けた書類は、既に古代語の辞書を三冊重ねたほどの高さに達していた。しかし残念なことに、机の反対側には未処理のも... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第六章 決別 決別 8 そう言いながら、ノヴァは頭上に目をやった。優美な天井画、細やかな装飾の硝子窓。それらは息をつくほど美しかったが、彼女達にはなんの慰めにもならなかっただろう。人の痕跡がないはずである。幽閉、という言葉からして、この場所を訪なう者がほぼ皆無だっ... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別