Eternal cage 第六章 決別 決別 7 深い青の中を落ちていく。静かに水を温める陽光に、遠くの魚たちの鱗がきらめいていた。揺蕩う透明な海月、千切れて彷徨う海草、不意に舞い上がる海底の砂。夥しい命を育む場所というのは、ただそこにあるだけで神秘的だった。こんな光景を悠々と眺めたことが... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第六章 決別 決別 6 ほどなくして、頭を揺さぶられるような轟音が辺りに響き渡った。大地が震え、吹きすさぶ爆風で遺跡の一部が崩れ瓦礫が飛ぶ。身構えていてもかなりの衝撃だった。身体が痺れるような感覚がようやく治まると、ユイス達は隠れていた壁から外側を覗き見た。つい先... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第六章 決別 決別 5 以前の旅路がだいぶ大回りだったことを考慮しても、今回の遺跡への道行は早いものだった。効率だけを重視して神殿にも立ち寄らず、以前は控えていたが多少権力を振りかざすような真似をすれば、目的に数日で辿り着いてしまった。こうなると、紗に隔てられたよ... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第六章 決別 決別 4 漆黒だと確信していた空の際から、少しずつ白い輝きが溢れ出していた。明かりを落とした室内もその影響を受け、窓から注ぐ冴え冴えとした光で満たされていく。その様子を窓際から眺めていたユイスは、そろそろ頃合いかと大きく伸びをした。準備ははティムトと... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第六章 決別 決別 3 ティムトを追う形でユイスがやってきたのは、回廊に面した中庭だった。そういえば外の空気を吸うこと自体久しぶりだ。幾日ぶりかに見た空は穏やかに晴れ渡っていた。敷き詰められた芝生の青さは光を受けて鮮やかに輝き、中央に据えられた噴水では金色の飛沫が... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第六章 決別 決別 2 ユイスが帰還してさほど間を置かず、王はクロック症候群の収束を民に宣言した。唐突な知らせに誰もが半信半疑な様子であったが、個人差はあれど王都にいる患者も回復の兆しを見せている。彼らが心からの安堵を得る日は遠くないだろう。時代の時柱の問題を除け... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第六章 決別 決別 1 クロック症候群は収束する。ノヴァの言葉が真実であることは、ユイス自身が身をもって知ることとなった。最初に変化があったのは遺跡を離れてほどなくのことである。全身に強い倦怠感が現れた。それだけならただの疲労なのだが、次第に手足の違和感が増し始め... 2020.09.13 Eternal cage 第六章 決別
Eternal cage 第五章 犠牲 犠牲 9 「イルファ!」 鋭い叫びに応えるようにして、巨大な蛇のように炎がうねった。爆煙を巻き起こし、顎をあけてヴァルトたちに襲い掛かる。それを避けようとした二人の隙間を狙って炎は軌道を変え、片方だけを取り囲むようにしなったかと思うとユイスを巻き込ん... 2020.09.13 Eternal cage 第五章 犠牲
Eternal cage 第五章 犠牲 犠牲 8 状況がある程度落ち着いたところで、ユイスは神官たちに後を任せ町を離れることを決めた。時柱を早く取り戻さねばならない現実に気が急いたのもあるが、住民たちの反発が強くなってきたことが大きい。いくら弁明したところでユイスたちは彼らにとって異物に過... 2020.09.13 Eternal cage 第五章 犠牲
Eternal cage 第五章 犠牲 犠牲 7 人気のない廊下に、足音が高く響く。既に就寝しているであろう人々への迷惑は、既にレイアの頭からは抜け落ちていた。階段を駆け下り、食堂を抜けて玄関の扉を開け放つ。途中で夜通し仕事をしていた神官に何か声を掛けられた気がしたが、構ってはいられなかっ... 2020.09.13 Eternal cage 第五章 犠牲