Eternal cage 第一章 小さな炎

Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 11

幸い助け出した少女に大事はなく、程なくして目を覚ました。母親はユイスに抱えられた我が子を見て絶句していたが、少女が意識を取り戻すと此方が申し訳なくなるほどに頭を下げた。恐らく、その様子を見ていた人々から話が飛び火したのだろう。街の人々はユイ...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 10

扉を開けて飛び込んだ先は、どこまでも赤い悪魔に支配されていた。目が眩むほど煌々と燃える炎、身を焦がすような灼熱。しかし、不思議とユイス自身が炎に焼かれることはなかった。一瞬怯んだ自分とは違い、平然と炎を見つめる精霊を横目で伺う。これは彼の力...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 9

小さな炎の化身が生み出した火種は、瞬く間に周囲を火の海へと変えていった。自警団の尽力により速やかに住民の避難は完了したものの、飛び火した民家の多くは猛火に飲み込まれ、既に手の施しようがなかった。それを見つめながらある者は取り乱し、ある者は放...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 8

精霊に誘われるままに大通りを抜け、いくつかの細道を通った先。辿り着いたのは、住宅街の片隅にある小さな空き地だった。ユイス達が追い付いたことを確認すると、道案内の精霊は役目は終わったとばかりに姿を消した。 走ったせいで乱れた呼吸を整えながら、...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 7

神聖さを湛える厳かな街も、目抜通りに出れば殊の外賑やかであった。所々にある屋台からは、快活な客寄せの声。菓子を焼いているのか、甘い香りが鼻を擽る。食品店の前には、夕食の献立に悩む女性。玩具を欲しがって駄々をこねる子供の姿。どれも活気に満ちた...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 6

それ以外に、考えられる選択肢は無かった。まさかこんな不意打ちのような形で接触を得るとは思いもよらず、ユイエステルは二の句を継ぐことが出来なかった。緊張のせいか、妙に口渇を覚える。それはユイエステルに限ったことではなく、ジーラスもフェルレイア...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 5

翌日。ユイエステルはジーラスとフェルレイアを伴い、とある場所を訪れていた。装飾を一切排除した白い天井。鏡のように磨かれた曇りひとつ無い床。まるで外界から隔絶されたように、物音ひとつしない。ただユイエステル達の靴音だけが、やけに高く響いていた...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 4

淡い光が、眼球を刺激する。目覚めを自覚した瞬間、ユイエステルは慌てて飛び起きた。「ここは……」 その動きに合わせて軋むベッドの音と、糊の効いた真新しいシーツの感触。辺りを見渡すと、質素な、そして必要最低限の物品が置かれているのが目に入った。...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 3

瞼を開いた瞬間、ユイエステルは困惑した。目を覚ました場所が、あまりにも想像と違っていたからだ。 屋内なのは、解った。己の身体か横たわる床には赤地に金の刺繍がされた絨毯、部屋に置かれた華やかな装飾の調度品。そこそこ身分のある貴族の屋敷、といっ...
Eternal cage 第一章 小さな炎

小さな炎 2

目的地であるルーナの街は、王都から馬車を乗り継いで約二日ほどの所にある。幸いにして天候もよく、途中で足止めを喰らうこともせずに済みそうだった。これならば当初の予定通りに着けるだろうと、ユイエステルは安堵の息をつく。窮屈な乗り合い馬車から眺め...