Eternal cage 第二章 歪み、映すもの 歪み、映すもの 4 トレルの森、とそこは呼ばれているらしい。町を出て更に西、然程遠くはない場所にある。地の精霊王はその奥深くに住まい、人々の営みを見守っているという。目的地へ向かう道すがら、使者として訪れた青年が語った。「聖殿――我々の場合は聖域と呼んでいます... 2020.09.13 Eternal cage 第二章 歪み、映すもの
Eternal cage 第二章 歪み、映すもの 歪み、映すもの 3 イローのねぐら、と名付けられた町唯一の宿屋は、こぢんまりとしていたが中々に快適なものだったと思う。主人が大変気さくな人柄で、慣れない町だからと細やかな気配りをしてくれたお陰だろう。部屋も人数の割りに広いものを用意してくれたし、食後にはおまけ... 2020.09.13 Eternal cage 第二章 歪み、映すもの
Eternal cage 第二章 歪み、映すもの 歪み、映すもの 2 「失礼致しますぞ」 数名の神官を従えて表れたのは、記憶に違わずふてぶてしい男だった。歩くたびにたっぷりと蓄えた腹の肉が揺れ、太い指には幾重にも重ね付けされた指輪が光る。聖職者として見苦しいとしか言えない出で立ちである。彼はそれなりに有力な貴... 2020.09.13 Eternal cage 第二章 歪み、映すもの
Eternal cage 第二章 歪み、映すもの 歪み、映すもの 1 ルーナを出立した一行の旅路は、極めて順調なものだった。天候にも恵まれ、これといって厄介事もなく、次の目的地にも恙無く到着することができた。 ――だというのに、なぜこんなに気を揉まなくてはいけないのだろうか。前方を歩く少女と精霊の様子を見ては... 2020.09.12 Eternal cage 第二章 歪み、映すもの
Eternal cage 第一章 小さな炎 小さな炎 11 幸い助け出した少女に大事はなく、程なくして目を覚ました。母親はユイスに抱えられた我が子を見て絶句していたが、少女が意識を取り戻すと此方が申し訳なくなるほどに頭を下げた。恐らく、その様子を見ていた人々から話が飛び火したのだろう。街の人々はユイ... 2020.09.12 Eternal cage 第一章 小さな炎
Eternal cage 第一章 小さな炎 小さな炎 10 扉を開けて飛び込んだ先は、どこまでも赤い悪魔に支配されていた。目が眩むほど煌々と燃える炎、身を焦がすような灼熱。しかし、不思議とユイス自身が炎に焼かれることはなかった。一瞬怯んだ自分とは違い、平然と炎を見つめる精霊を横目で伺う。これは彼の力... 2020.09.12 Eternal cage 第一章 小さな炎
Eternal cage 第一章 小さな炎 小さな炎 9 小さな炎の化身が生み出した火種は、瞬く間に周囲を火の海へと変えていった。自警団の尽力により速やかに住民の避難は完了したものの、飛び火した民家の多くは猛火に飲み込まれ、既に手の施しようがなかった。それを見つめながらある者は取り乱し、ある者は放... 2020.09.12 Eternal cage 第一章 小さな炎
Eternal cage 第一章 小さな炎 小さな炎 8 精霊に誘われるままに大通りを抜け、いくつかの細道を通った先。辿り着いたのは、住宅街の片隅にある小さな空き地だった。ユイス達が追い付いたことを確認すると、道案内の精霊は役目は終わったとばかりに姿を消した。 走ったせいで乱れた呼吸を整えながら、... 2020.09.12 Eternal cage 第一章 小さな炎
Eternal cage 第一章 小さな炎 小さな炎 7 神聖さを湛える厳かな街も、目抜通りに出れば殊の外賑やかであった。所々にある屋台からは、快活な客寄せの声。菓子を焼いているのか、甘い香りが鼻を擽る。食品店の前には、夕食の献立に悩む女性。玩具を欲しがって駄々をこねる子供の姿。どれも活気に満ちた... 2020.09.12 Eternal cage 第一章 小さな炎
Eternal cage 第一章 小さな炎 小さな炎 6 それ以外に、考えられる選択肢は無かった。まさかこんな不意打ちのような形で接触を得るとは思いもよらず、ユイエステルは二の句を継ぐことが出来なかった。緊張のせいか、妙に口渇を覚える。それはユイエステルに限ったことではなく、ジーラスもフェルレイア... 2020.09.12 Eternal cage 第一章 小さな炎